*オーガニックガーデンの恩人


先週、悲しい知らせが届きました。

 

僕の無農薬バラ栽培の大恩人であり、

植物界の著名人でもある武田和男様が旅立たれました。

 

サカタのタネで、長年、ペチュニアの品種改良に取り組み

現在流通しているペチュニアは和男様の手になるものがほとんどと聞いております。

 

サカタのタネを定年で退職された後は

奥様の和子様と共にハワイに渡り、お二人で1万坪の植物園を経営されていました。

しかも、驚いたことにすべての植物を無農薬栽培で管理されていたのです。

 

60歳でハワイ渡り、20年間、植物園を営んでおられて、

80歳で日本に戻られたとのことでした。

なんとドリプレ・ローズガーデンから車で30分のところにお住まいだったのです。

 

植物の神様がお二人をせつさんと僕たちのローズガーデンに導いてくださったとしか思えません。

 

初めてお会いしたのは、忘れもしません、僕が無農薬バラ栽培に取り組んだ翌年

2013年のバラの季節の終わりの頃でした。

この時は武田和男様がお友だちとガーデンにいらっしゃいました。

奥様の和子様はその後、お二人でお見えになったと記憶しています。

 

2012年から完全無農薬に切り替えて、試行錯誤していたときでした。

何をやってもうまくいかず、バラたちも害虫や病気にさらされてたいへんな状況でした。

 

「ただの荒れ地」「バラがかわいそう」「無農薬は邪道である」「肝心のバラがまったくダメ」

「近所のバラ好き主婦の庭のほうが全然まし」「バラにもっと愛情をかけてほしい」

「こんなガーデンが、なんで『バラの名園50選』に選ばれたのかまったくわからない」・・・・・

この頃は、お客様から散々、いろんなことを言われました。

確かに最後の意見には、僕も納得いたしました。

 

そんな状況だったにも関わらず、武田和男様は、僕たちのガーデンを褒めてくれたのです。

「素晴らしいガーデンです。無農薬に取り組んでいるところも素晴らしい。」

 

正直、挫折しかかっていた時だったので、心から救われました。

しかも、ハワイで1万坪もの植物園をご夫婦で管理されていた大先輩から

こんな言葉をかけていただけるなんて、涙が出るほど感激したものです。

 

「3年、我慢しなさい」

武田和男様のこの言葉を信じて、もう一度、やる気にスイッチが入りました。

どおーんと、背中を押されたのです。

 

その後、お二人からお食事に誘っていただいたり、植物談義に花を咲かせていただいたり

本当にせつさんや僕のことを気にかけてくださいました。

 

お二人のお友だちのバラの育種家であり、

数々のコンクールで受賞された吉池貞蔵様をご紹介いただいたのも良い思い出です。

 

ドリプレ・ローズガーデンでも、吉池様のバラを育てております。

 

 5月31日、ドリプレ・ローズガーデンの無農薬で育てたバラたちが満開の日、

お一人で旅立たれた武田和男様に、ぜひ、咲いているバラの姿を見てほしかったです。

 

旅立たれる前の日にお見舞いに行って、

ドリプレのバラのスマホの写真を見せてあげたのですが、

うんうんとうなずいてくれたのが最後になりました。

 

無農薬で育てた今年のバラは、今までいちばんきれいに咲いてくれました。

和男様からのプレゼントだと思います。

 

6年前のあの日、武田和男様から声をかけていただいたことが

せつさんと僕のオーガニックローズの始まりとなりました。

 

本当にありがとうございました。

すべては武田和男様、武田和子様、お二人のおかげです。

心から感謝しております。

 

これからも、武田和男様の遺志を受け付いて、

オーガニックガーデンを突き詰めて行きたいと思います。

 

それにしても、なんで大切な人は皆、バラの季節に逝ってしまうのだろう。

 

合掌

 

2019年6月7日 ドリプレ・ローズガーデン 清水幸三

 


*オーガニック・ローズガーデンへ


2012年の秋に完全無農薬バラ栽培に切り替えてから

今年で5年目を迎えようとしています。

ようやく、ほんの少しだけ片目が開いてきた気がします。

 

不安で胸が張り裂けそうになりながら始めた無農薬栽培でしたが、

案の定、まったく思うように行かないことばかりでした。

 

自宅のガーデンとはいえ、一般公開しながらの無農薬への取り組みは

それはもう無謀というしかありませんでした。

 

翌年の毛虫の大発生、さらには病気の蔓延、そのことによるバラの生育不良。

いちばん驚いたのは、鹿による新芽やつぼみの食害。

無農薬バラ栽培は、病害虫だけでなく、獣害をも引き寄せるのだと痛感しました。

 

ある朝、ガーデンをチェックしていると、

前日にたくさんあったつぼみがひとつもありません。

隣りのバラをみると、同じように摘蕾(てきらい)でもしたかのように

まったくつぼみがありません。

ガーデン全体を見回してみると同じような状況でした。

僕はもうその場にへなへなと座り込んでしまいました。

犯人が鹿だとわかったのは、隣りの植木屋さんから教えられました。

春先の3月から5月にかけては、新芽を食害するのが通例なのだそうです。

 

もちろん、手をこまねいていたわけではありません。

当初は木酢液を中心に葉面散布や潅水をしていたのですが、

どうにも思うような結果がでませんでした。

鹿や猪には、土地の境界全体500mにぐるりとフェンスを張り巡らしました。

それでも、簡単には獣害を抑えることはできません。

 

本当に何度も心が折れかけました。

  

そんなとき、ハワイで無農薬植物園を運営されていた老夫婦がお見えになり、

いろいろと貴重なアドバイスをいただきました。

 

正直、もうガーデンをやめてしまおうかと思っていた時期だったので、

この老夫婦のアドバイスは神様からの贈り物かと思ったものです。

 

その中で、「3年我慢しなさい。」という言葉を胸に、

よし3年はがんばろうと、決意を新たにしました。

 

そして、3年がたちました。

不思議なことにあれほど、病害虫に悩まされていたのに、

特に害虫の被害が極端に少なくなりました。

野鳥やカエル、てんとう虫、カマキリ、クモなどの天敵が増えたおかげだと思います。

ガーデン全体に野鳥が目に見えて増えたのは予想外でした。

 

病気については、その後、木酢液から自家製の微生物資材を使うようになってから

かなり抑えられています。

 

現在は、納豆菌、乳酸菌、酵母菌を主体とした「えひめai」をメインに、

手作りの「光合成細菌」、「にんにく唐辛子木酢液」を併用することで、

完全ではありませんが、病害虫の発生をかなり防いでいます。

 

昨年、訪れたお客様で、科学物質過敏症の方がいらっしゃいました。

うちのガーデンがオーガニックで育てていると聞いて、

わざわざお越しいただいたのでした。

 

その方はどこに行っても科学物質を使っているとすぐにわかるそうですが、

「ここは本当に気持ちのよい場所ですね」とたいへん喜んでいただきました。

 

お客様から喜んでいただけることはとてもうれしいことです。

でも、お客様からの厳しい言葉もそれはとてもありがたいと思っています。

なぜなら、そのときは腹が立つし、なにくそ、と思うのですが、

僕のやる気のすべての原動力になるのです。

 

まだまだ、道なかば。というか、スタート地点にたったばかりなので、

これから新しい試みをどんどん取り入れて行こうと思っています。

 

いま、いちばん気になっているのが、「マイクロナノバブル水」。

NHKでも取り上げられましたが、ナノレベルの微小な目に見えない泡のことで、

この水で植物を育てると発根促進や病害虫対策にもいいらしいのです。

科学的な反応は一切なく、ただの水を物理的に微小な泡にするので、

環境への負荷はまったくなく、もちろん残留性もいっさいありません。

 

バラで試している人はまだほとんどいないようなので、

ドリプレローズガーデンで試してみてどうなるか。

昨年からガーデンで使う水をすべて、マイクロナノバブル水に切り替えました。

 

オーガニック・ローズガーデン。

 

その理想は、咲き誇る植物たちといっしょに、

野鳥や蜂に蝶々、カエル、昆虫たちも共生できる生命あふれるガーデン。

バラに悪さをする虫だって、少しくらいならいてもかまいません。

 

手探りで始めたこの道は確かに厳しいですが、

いつか実現することを夢見て、

植物たちと答えのでない会話を続けています。

 

2017年2月7日 イギリスのカントリーサイドにて 夫

 


*無農薬のこと


ドリプレ・ローズガーデンは、どうして無農薬栽培なのか、

きちんとお話ししていなかったので、

考えをまとめておこうと思いたちました。

 

15年前、川崎の住宅街の30坪ほどの庭で150本ほどのバラを育てていました。
当初は教科書の教え通り、農薬を散布していました。
極力、ご近所に迷惑をかからないようにしていたつもりですが、

農薬を散布し始めると、お隣の窓がバタンと閉められます。

さらに、洗濯物を取り込まれたこともたびたびありました。

 

当時、バラにどっぷりつかっていた妻のせつさんは、

そんな状況に息苦しさを感じたのでしょうか、

まだ日本であまり知られていなかったターシャ・テューダーさんのように、

人里離れた山の中で思いっきりバラを育てたいということを

しきりに口にするようになりました。

 

その思いがようやく叶って、この房総半島の山の中で開墾を始めたのが9年前。
当時、僕たちを迎えてくれたのは、ウサギやリス、シカ、イノシシ、アナグマ、

シジュウカラやメジロ、ウグイス、ホトトギス、野ネズミ、蝶々、蜂、カブトムシ、クワガタ、それに天然記念物のモリアオガエルまで、ほんとうにたくさんの動物や昆虫たちでした。

 

2年ほどの開墾が終わって、いよいよバラを植え始めてからも、

当初は農薬を散布していなかったので、まだまだたくさんの動物や昆虫たちがいました。

特に、 筋肉質のうさぎは毎晩、東京からの僕たちの帰りを門のところで

待っていてくれたものでした。ピーターという名前を付けて、家族のように思っていました。

 

そして、2010年、地元の人たちの声に押されて、ガーデンを一般公開しようと決めてから、少しでもたくさんのバラを一人でも多くの人にご覧になっていただけたらという思いで、

農薬を使うようになりました。

元々、このガーデンは自分たちの理想のローズガーデンをつくろうという思いで始めたので、

一般公開を念頭において設計されていません。

植えているバラも、せつさんの個人的な好みのイングリッシュローズと

オールドローズを中心とした、少し変わったローズガーデンでした。

そして農薬もいっさい使っていませんでした。

そんなプライベートガーデンですが、やはり病気にかかったり、

虫に食われたりしたバラを皆さまにお見せするのは気が引けるので、

農薬をできる限り少なく最小限で使うことにしたのです。
それでも、4000坪の土地で2000本の全部のバラに農薬を散布するのに、

1ヶ月で1トンを超える農薬を撒かなくてはいけません。

いつも撒布の後、体がだるくなって、なにより頭痛にはまいりました。

 

農薬を散布し始めてから、うさぎのピーターがいつの間にか、来なくなりました。
そして、毎年、ガーデンの池に綿あめのような卵を産み付ける

モリアオガエルもいなくなってしまいました。

その代わりというか、バラの花がけっこう咲いてくれたので、

一般公開してからたくさんの人たちが来てくださいました。

その後、テレビや新聞、雑誌に取り上げられたこともあって、

ほんとうに遠方からもお子様からご年配の方まで、幅広い世代の人にご来園いただいて、

正直、僕自身も舞い上がっていました。

そんな中、ドリプレ・ローズガーデンを訪れてくださった

あるお客さまのブログを偶然拝見しました。
歩き始めたばかりの女の子が裸足でメインガーデンの芝生を歩いている写真でした。

芝生については、当初から一切農薬を使っていなかったので、

ああよかった、と心の中でつぶやいたものです。
その頃から、なんだか、心の中にもやもやしていたものが広がってきたのです。

そして、無農薬に取り組むきっかけとなったのが、「奇跡のリンゴ」という本でした。

 

無農薬無肥料でリンゴを育てている木村秋則さんの壮絶な人生を知って、

感動したのと同時にこれははんぱな気持ちでは無農薬はできないなあと感じました。

それからというもの、無農薬に関する本を片っ端から読んでみました。

 

バラの無農薬栽培は、いま、ちょっとしたブームにもなっていて、

その類の本やインターネットでの情報サイトなど、かなり見つけられます。

しかし、4000 坪の土地で2000本からのバラを無農薬でできるかどうか、

まったく自信がありません。もっとも、それまで農薬を使っていても、

病害虫の被害はけっこうありましたから、開き直りの気持ちもありました。

 

そして、2012年からバラの無農薬栽培を始めることにしたのです。

元々、バラも好きだけど、たくさんの動物や昆虫も好きなせつさんは、

川崎に住んでいるころは自分でもためしてみようと木酢液をまいたり、

ジンにトウガラシやドクダミを漬け込んだりして、いろいろ試していました。

ですがこの広さとたくさんのバラの無農薬栽培のたいへんさは理解しているかどうか・・・。

というわけで、無農薬でやっていくことについては、

賛同というか、 動物や昆虫たちが住める場所だといいな、という感じでした。

 

それからしばらくたって、ガーデンにある老夫婦が訪ねてくださいました。

話を聞くと、60歳で定年してからご夫婦でハワイに移り住み、

無農薬無肥料の植物園を作り上げたとのことでした。

20年を区切りにその植物園を売却して日本に戻ってきたとのこと。

 

こちらがその植物園になります。

http://enchantingfloralgardens.com/

 

僕はこのご夫婦の話を聞いて、背中を押された気がしました。

まだまだ試行錯誤の連続で、なんどもくじけそうになるときがあります。

梅雨時の葉が落ちてしまったバラたち、夏の黒点病で痛んだバラたち、

生育不良でなんともさびしげなバラたち、こんなバラたちを見るにつけ、

農薬を撒いてしまおうかと何度思ったことか。
そのたびに、木村秋則さんの「リンゴはリンゴだけで生きているのではない」という言葉と、

ハワイの無農薬植物園を作り上げたこのご夫婦の「3年我慢しなさい」という言葉が、

心の中に強く響くのです。

 

今年の夏は特に暑さが厳しかったのですが、

農薬をまったく使用していないバラたちがけっこう咲いていました。

その色合いがすばらしく、ああこれがバラ色なんだと強く思ったものです。

それになんといっても、環境のいいところにしか住まないと言われる、

天然記念物のモリアオガエルが戻って来てくれたことがとてもうれしかった。

なんとか、かすかな光明も見えてきたような気がします。

 

この先、どうなるか見当もつきませんが、

今はやれるところまでやってみようという気持ちになっています。


2013年9月5日 夫


*ドリプレのバラたちは無農薬栽培


ドリプレ・ローズガーデンのバラや植物たちは、すべて無農薬で育てています。ガーデンにやってくる野鳥や蝶々、蜂やとんぼ、リスやうさぎ、みんなと仲良くしたいのです。そして何よりもお客様にとってもよい環境でありたいと思うのです。お子様が裸足で歩ける芝生の小道、バラに顔を近づけて香りを楽しめること。お連れになるワンちゃんにも、我が家の猫たちにも、安心できるガーデンが理想なのです。




*微生物と仲良くする


ドリプレの無農薬栽培の基本は、微生物と仲良くすること。納豆菌、乳酸菌、酵母菌、光合成細菌、この4つの強力な微生物を味方につけて、ガーデンに居着いてもらえるよう作業しています。具体的には、納豆菌、乳酸菌、酵母菌からできている「えひめai」。魚エキス、海藻エキスで育てた「光合成細菌」。この2つの微生物資材を、年間各200リットル位を培養して手作りして使っています。さらに、酵母菌主体の有機液肥も合わせて、毎日、ローテーションで濃度を変えて葉面散布と潅水を繰り返しています。


*木酢エキス2段階作戦


さらにもうひとつの主役は、木酢液。それも純度の高い品質の良いものがいちばん。いろいろ吟味して紀州備長炭をつくるときに精製される木酢液を使用しています。原料が広葉樹のウバメガシで、半年間寝かせてタール分を取り除いたもの。この木酢液に魚のアラやカニ殻、貝化石を溶かし込んだ、バラを活性化させる基本エキス。さらに唐辛子やニンニク、ローズマリーやミントなどのハーブをつけ込んだ病害虫エキス。この2つを定期的に撒布しています。